
絵画は一般的に目で見て楽しむもの。
それは当たり前のこと過ぎて今更そこに疑問を感じる事はなかったが
そうなると目が見えない人は絵を楽しむ事が出来ないということになる。
芸術は人に癒しを与えたり、なにかしらのメッセージを与えて感情に訴えかけるもの。
そんな芸術を目が見えない視覚障害者の人でも楽しめる美術展を昨年パナマで開催された。
美術品は通常手で触れることが許されていないことが多いのだが
この美術展では手で触れるだけでなく、嗅覚によっても楽しむ事が出来る。
目が見えない人達の為だけにアートを創るという斬新な取り組みが行われたのである。
■視覚以外で感じる世界
普段絵画をメインに創作活動している7人のアーティストを集めて
日用品として使っているものを材料に触れたり匂いを嗅ぐことで芸術を感じる作品を創り上げた。
また、視覚障害者の方々により芸術を分かりやすく感じてもらう為に
英語とスペイン語の点字によって説明文をつけるなどの工夫した。
作品の知識をつけて理解度を高めてから作品を楽しんでもらえるようにしたのだ。
今まで芸術とは無縁と感じていた視覚障害者の人達にとっても
それを作り出す側のアーティストにとっても表現の幅や感情の幅、イメージする力など
今までにない刺激があったに違いない。
今回の取り組みによって障害者の人達の楽しみが増えると共に
芸術家の人達にとっても進むべき道の選択肢が一つ増えたことは
芸術界という大きな枠組みの中で見ても大きな一歩なのではないだろうか。
こうした取り組みはこれから世界中で広がりを見せていことが予想される。
■今後のアートの在り方
今後、技術の進歩によって視覚障害者でも楽しめる方法というのは増えてくると思われる。
例えば、脳科学の進歩によって人の想像力やイメージしたものを頭の中で映像として流れる機能を
人間が自由にコントロール出来るようになれば
脳に直接絵の色や形、大きさなどを送りこむ事が出来るようになる。
一般の人達がVRでいろんな場所を疑似体験できるように
視覚障害者の人達もまるで目の前に絵があるかのような疑似体験を出来る日は必ずくるのだ。
これは視覚障害者だけではなく、匂いを感じなかったり、耳が聞こえなかったりする人達にとっても
同じような体験が出来ると考えられる。
匂いを感じない人は絵の具の香りや美術館の匂いを疑似体験できるし
耳が聞こえない人も音楽を楽しむ事が出来るようになる。
脳科学の解明が進めば進むほど障害を持っている人達にとって不自由無い生活が待っている。
アートはこれから誰もが楽しめる時代になっていくと考えられる。