
最近なにかと話題となっている絵画がオークションで落札後に切り刻まれた事件。
世界一有名なグラフィティアートを描く覆面芸術家(バンクシー)の作品である「風船と少女」は
104万2000ポンド(約1億5500万円)というバンクシー作品の最高落札額となった。
「芸術テロリスト」という異名を持つ彼のパフォーマンスは他の芸術家とは別の光を放っており
ゲリラ的に描くストリートアートや自作の作品を勝手に美術館に展示するなど
一般的な枠から大きく外れた行動で有名だ。
利益目的では無くメッセージ性の強い作品を生み出す彼の作品に魅了されたファンは多く
これからも絵画の価値が上がっている事が予想される。
今回は、そんなバンクシーの思想や芸術分野における役割について考えていきたいと思う。
■芸術に対する思想
バンクシーはオークションに対してもともと否定的だった。
シュレッダーを仕掛けたのはバンクシー本人であることは分かっていて
落札後すぐに絵画を切り刻んだ事から自らの作品が高額で取引されることへの否定的な感情が伺える。
そもそもなぜ高額で落札されることを嫌うのだろうか?
通常であれば自分の作品の価値が上がる事を芸術家であれば望むはずだが
バンクシーは落書きを主な活動としていることから利益目的で芸術活動をしていないことは分かる。
芸術は絵を描く事が楽しいという画家の感情。
絵を見る事で癒されたり、楽しい気持ちになったり、苦しくなったり、いろんな感情が見る側にも沸き起こる。
絵は描く人や見る人によって色や形、メッセージが変わり、国や人種を超えて万人が楽しめるもの。
一部の上流階級の人や個人で独占して楽しむものではなく
誰もが自由に楽しめる空間を重視しているのではないだろうか。
有名になればなるほど、自身の作品は価値が高くなり誰かの所有物になる確率が高くなる。
有名になれば多くの人に影響力を与えられるようになる半面
何千、何万という人達に伝わるべきメッセージが、たった数人にしか伝わらない状況になるジレンマが
今回の事件を引き起こしたのではないかと考えられる。
こればかりは本人に聞いてみないと分からない為、いろんな憶測が飛び交っているが
こうして考えさせられる機会を与えることこそ彼の意図しているところなのかもしれない。
■バンクシーの影響力は加速する
今回のシュレッダー事件が芸術史に残る事は間違いない。
バンクシー自身、今までの歴史上でどのような絵画が価値が上がるかを理解しているはずだから
落札後に切り刻んだ絵画はさらに価値を高めることになることは予想しているに違いない。
現代アートにおいて世界で初めてオークション会場で切り刻まれた絵画の希少性は高く
年月が経てば経つほど、これからバンクシーが有名になればなるほど価値が高まっていくだろう。
これによってバンクシーの影響力は加速していく。
もしかしたら、この影響力こそが彼の求めているものではないだろうか。
バンクシーが発信する絵は小難しいものというよりは、一般的に分かりやすく理解しやすい作品ばかり。
本当に大切なものは言葉で言ってもなかなか気づけない事が多いが
絵画という媒体を使って頭の中でイメージさせる事で何十倍も理解しやすくなるし
何より心に刺さる。
今までバンクシーを知らなかった人も知るきっかけになったし
芸術に興味が無い人も興味を持つようになった。
芸術への関心を高めて、バンクシーの思想を後押しする母数が増えた事によって
これからの活動はより注目を集めることになる。
つまり、これからの彼の作品や行動にこそ彼が最も伝えたい事を発信していくのではないかと思う。
これはあくまで僕の考察であって間違っているとか間違っていないとかではないが
そうした視点で注目していくと、また違った見方が出来るかもしれない。